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トップ> コラム一覧> つくり手:日本人の感性に響く、和の「アールグレイ」【前編】

つくり手

日本人の感性に響く、和の「アールグレイ」

2020.12.28

「Tea Creator」シリーズとは、お茶づくりのプロフェッショナルがこれまで培ってきた経験と、研ぎ澄まされた五感から創りだされる、個性豊かなオリジナルブレンドティーだ。「Tea Creator」に込められたつくり手たちの思いを、その一杯とともにお届けしたい。

「にっぽんのアールグレイ–橘晴-」つくり手:森 智洋

三井農林株式会社 R&Dグループ 茶葉開発ユニット所属
2013年入社、藤枝工場の鑑定室配属、烏龍茶やジャスミン茶などの中国茶関連業務に携わる。2016年、紅茶の開発担当に着任。2017年からは買い付けも担当。2019年より再び開発業務に専念、現在に至る。
得意分野はブレンドと焙煎。リーフティーから、ペットボトルなど容器入り茶の原料茶葉まで、幅広い形態の開発業務を行う。

主な作品・受賞歴
2017年「マジェスティ」日本茶AWARD審査員奨励賞(部門2位)
2018年「マジェスティ2」日本茶AWARDファインプロダクト賞(部門1位)
2019年「にっぽんのアールグレイ〜橘晴〜」日本茶AWARD 審査員奨励賞(部門2位)

※日本茶AWARDとは?
日本茶の新たな価値を見出し、多くの方に多種多様なお茶の美味しさや香りを伝え、更には新しい生活スタイルを提案し日本茶の多様性と幅広い魅力を国内外へ発信する為に開催している品評会です。

写真

今回、登場するのは「にっぽんのアールグレイ -橘晴-」を生み出した森 智洋。日本らしさを探求した和テイストのアールグレイ。【前編】では、その開発ストーリーと作品の魅力を語ってくれた。

爽やかな柚子の清香。日本人らしさを探求した和の「アールグレイ」

:柑橘系の果実ベルガモットの爽やかで高貴な香りが魅力の「アールグレイ」は、日本でも高い人気を誇る紅茶です。そのアールグレイを和テイストで再構築したのが、この「にっぽんのアールグレイ -橘晴(きっせい)-」です。
日本人らしい繊細な感性に響く風味を表現するために、まずは日本古来の柑橘である「柚子」をセレクトしました。ただ、柚子だけだと酸味が強く出てしまうため、そこに「陳皮(蜜柑の皮)」を配合することによって少し柔らかい風味と甘さを重ね、日本人が柚子といえば想起する透明感のある清香を楽しめるように味づくりをしました。
:ベースとなる紅茶に関しても、柑橘特有の風味を邪魔せず、和紅茶らしい芳醇な甘みがあり、少し花の香りを感じるような優しい味わいをしっかり出せるように意識してブレンドしました。
イギリスを発祥とする一般的な「アールグレイ」には、紅茶の茶葉にベルガモットから抽出した精油を着香(フレーバリング)したものが多いのですが、「にっぽんのアールグレイ -橘晴(きっせい)-」では、国産の素材本来の持ち味を活かすために、あえて香料は使用せず、素材のブレンドという製法を選びました。
和紅茶に柚子と蜜柑の果皮をブレンドした見た目にも華やかな「アールグレイ」で、お客様の日常に、ひとつ上の和の安らぎをお届けできましたら幸いです。
アールグレイの基礎知識
一般的な「アールグレイ(Earl Grey)」は、紅茶にベルガモットという柑橘系果実の香りをつけた着香茶(香りをつけた紅茶・フレーバーティー)をいいます。1830年代、イギリスから中国に派遣された使節団が持ち帰った中国産の着香茶をグレイ伯爵(Earl〈アール〉=伯爵)が愛飲したことから名づけられたといわれています。
その後、同じような香りの紅茶をイギリスで開発しようということで、1960年代後半頃より、紅茶にベルガモットの精油を着香したものが開発され、現在、様々なメーカーが販売している「アールグレイ」の原型になったといわれています。
「アールグレイ」はフレーバーティーの一種であり、ダージリンやアッサムなどの、いわゆる産地の名前ではありません。また、茶葉のブレンドにも特に規定はないため、メーカーにより様々な種類の茶葉が用いられます。
茶葉と香りの組み合わせ次第で、多様な美味しさを探求できるのも「アールグレイ」の魅力のひとつではないでしょうか。