ダージリンという地域について
世界一の紅茶生産量を誇ると同時に、世界一の消費国でもあるインド。
そんなインドにあるダージリンは、インド北東部、ヒマラヤ山麓の標高500〜2,000mに位置する産地です。
生産量は少ないものの、香味に優れ、紅茶の中では最も価格が高いことで知られています。また、シーズンにより味わいや香り等の特徴が大きく変化します。
ファーストフラッシュのクオリティーシーズンは3月中旬から4月までで発酵が浅く、緑茶のように青々とした外観と黄味かかった淡い水色が特徴です。さわやかな甘い香りとフレッシュな味わいを楽しむ新茶です。
セカンドフラッシュのクオリティーシーズンは5月から7月上旬までで、1年のうちで最も品質が充実し、芳醇な香りと甘さを感じさせるコク、好ましい渋みを併せ持ちます。水色は淡いオレンジ色をしており、良品にはマスカテルフレーバーと呼ばれる独特の果物香があります。
ハッピーバレーという茶園について
Happy Valley Tea Estate(ハッピーバレー茶園)はインド北東部、西ベンガル州ダージリンの町に最も近い茶園で、Windamere、Mayfairというダージリンを代表するホテルからも徒歩20分ほどの場所にあります。ダージリンの町までは最寄りのバグドグラ空港から車で3〜4時間(95km)で着き、隣接する茶園にはSington、Steinthal、Aryaがあります。
開設は1850年、英国人のMr. David WilsonによりWilson Tea Estateとして設立され、1854年に生産が始まりました。1929年にインド人の手に移り、茶園名も現在のHappy Valleyとなりました。名前の由来は、ヒマラヤ山脈に囲まれたこの地の景色が絵画のように美しく、平和で幸福な場所である、ということから付けられたといいます。しかし、茶園は長いこと生産性重視で栽培を続けてきたためか、1960〜1980年をピークに、品質も生産性も悪化し、経営も成り立たず、ついには放置茶園となってしまいました。2007年3月、これをAmbootia GroupのDarjeeling Organic Tea Estate Pvt. Ltd.が買収、有機栽培に転換し、工場も建て直して茶園管理の強化を進めていきました。もともと、ここには中国実生が植えられており、茶園の標高は1,372〜1,981m、工場も1,951mとダージリンの中でも最も高い場所にあって、良質な紅茶ができる高いポテンシャルを持っていました。その上にAmbootia Groupの努力が実を結び、品質は向上、経営も順調となり、茶園労働者も健康的な生活を享受できるようになってきています。
Ambootia Group社長のMr. Sanjay Prakash BansalはインドBio Organic Tea Associationの議長を務め、インド政府のIndian Organic Standardsの共著者でもあり、かつインド通商産業省が統括する貿易局の一員という、農業知識、経営センス、政治的能力を兼ね備えた人物です。彼は荒廃茶園を有機栽培、Bio-Organicに転換再生して経営を立て直し、結果として労働者の生活環境を改善し茶園を再生させることで事業を伸ばしており、現在ダージリンに14茶園、アッサムに3茶園を所有しています。
Happy Valleyは大きな茶園ではないですが立地条件が良く、一般観光客も営業時間内であれば自由に入場でき各種茶試飲、製造見学が可能で、希望すれば茶摘み体験も楽しむことができ、ダージリン紅茶の普及にも貢献しています。
茶園の認証はJAS、NPOP、NOP、IMOIN、Demeter、Naturland、Fair Trade、Rainforest Alliance、RA、UTZ、ETP、FSSAI、ISO-22000、Halalを取得しています。(注1、注2)
(出典:日本紅茶協会発行 紅茶会報 4月号 2017 No.432)
注1)「ハッピーバレー茶園について」は、当社社員が上記出典元に寄稿した「茶園を訪ねて」という記事を再編して掲載しています。
注2)Ambootia Group社の茶園所有状況やハッピーバレー茶園の見学内容、および認証等は、掲載当時の情報です。また、Ambootia Group社およびAmbootia Group社が所有していた茶園の管理は、現在Lemongrass Organic Tea Estates Pvt. Ltd.に引き継がれています。