ダージリンという
地区について
世界一の紅茶生産量を誇ると同時に、世界一の消費国でもあるインド。
そんなインドにあるダージリンは、インド北東部、ヒマラヤ山麓の標高500〜2,000mに位置する産地です。生産量は少ないものの、香味に優れ、紅茶の中では最も価格が高いことで知られています。また、シーズンにより味わいや香り等の特徴が大きく変化します。
ファーストフラッシュのクオリティーシーズンは3月中旬から4月までで発酵が浅く、緑茶のように青々とした外観と黄味かかった淡い水色が特徴です。さわやかな甘い香りとフレッシュな味わいを楽しむ新茶です。
セカンドフラッシュのクオリティーシーズンは5月から7月上旬までで、1年のうちで最も品質が充実し、芳醇な香りと甘さを感じさせるコク、好ましい渋みを併せ持ちます。水色は淡いオレンジ色をしており、良品にはマスカテルフレーバーと呼ばれる独特の果物香があります。
キャッスルトンという
茶園について

キャッスルトン茶園の工場
Castleton Tea Estate(キャッスルトン茶園)はインド北東部、西ベンガル州ダージリン地方の南部に位置します。麓のSiliguriの町から車でMain Roadを行くと、Goomtee茶園を越えて標高1,400〜1,500mのKurseong の町に入り、その隣にあたります。またPankhabari Roadを利用するとMakaibari茶園を過ぎてすぐにCastleton茶園があり、その奥がKurseongの町となっています。Kurseongとは現地Lepcha語で「白い蘭の土地」という意味で、かつてはこの辺り一面に蘭が咲き乱れていたのでしょう。
茶園の創設は1865年、標高は750〜1,650mと高低差は大きいです。茶園名はCastle(城)から来ており、Castleton茶園とKurseongの町の境に“Bank-Ghar”(GharはHouseの意味)と呼ばれる城のような建物があったため、こう名付けられました。現地の人々はこの英語名Castletonとは別にGauri-Shankarとも呼んでいます。Gaurishankerはヒマラヤ山脈にある山の一つで、サンスクリット語で“Gauri”はGoddess(女神)、“Shankar”はConsort(仲間)、つまり「女神の仲間」という意味になります。そういえば1980〜1990年代のオークションで、品質の良いものはCastleton、そうでないものはGourishankarの茶園名で上場されていたことを思い出します。

鑑定の様子
Castletonの紅茶は、2番茶の時期にはダージリン紅茶特有のマスカットフレーバーが発現し、その優れた品質は世界的に評価されています。特に1990年代初めに製造されたものは品質が良く、1992年にはカルカッタオークションで当時の世界最高価格であるkg当たりRs.13,001という値で売買されました。茶樹の品種化は他のダージリン茶園同様に遅れており、実生が90%、品種が10%となっています(品種はAV-2、TV-78等)(注1)。また、有機栽培ではありませんが生産性は良くありません。Castleton地区とSpringside地区合わせて318.98haの茶園に固定労働者555名、季節労働者320名を動員して年間70〜100トンの紅茶を生産していますが、生産コストは高く経営を圧迫しています。
茶園は1984/1985年にGoodricke Groupが買収し現在に至っています。このGroupは他にもMargaret's Hope、Thurbo、Badamtam他、計8つのダージリン茶園を持っています(注2)。
茶園の認証はETP、FSSC22000、Rainforest Allianceを取得しています(注3)。
所在地 | Castleton Tea Garden P. O. Kurseong District Darjeeling‐734203, West Bengal,India |
茶園面積 | 471.2ha(注4) |
栽培面積 | 318.98ha |
年間生産量 | 77.4トン(2014年)(注5) |
従業員数 | 正規労働者 555人、臨時労働者 320人(注6) |
管理会社 | Amgoorie India Limited(Goodricke Group of Companies) |
(出典:日本紅茶協会発行 紅茶会報7月号 2015 No.411)
「「キャッスルトン茶園について」は、当社社員が上記出典元に寄稿した「茶園を訪ねて」という記事を再編して掲載しております。
注1)2024年10月時点で、茶樹の種類は、中国種76%、アッサム交雑種20%、品種(クローナル 種)4%です。クローナル種とは、種から苗木を作り育てる実生(みしょう)の茶樹に対して、特に風味に優れているものや病気や寒さに強 いものを選抜し、挿し木で栽培した品種のことをいいます。
注2)2024年10月時点で、 キャッスルトン茶園の管理会社であるGoodricke Groupは、5つの茶園( Castleton、Thurbo、Badamtam、Barnesbeg、Margaret's Hope)を持っています。
注3)2024年10月時点で、キャッスルトン茶園が取得している認証は、Rain Forest、FSSC22000です。
注4)2024年10月時点で、茶園面積は444.77haです。
注5)2023年の年間生産量は130.86MTです。
注6)2024年10月時点で、臨時労働者は180人です(正規労働者の人数に変更はありません)。