ニルギリ紅茶の基本情報
ニルギリは、インド南部タミル・ナードゥ州西部のニルギリ高原一帯に広がる紅茶産地です。南インドではカルナータカ州、ケララ州でも紅茶が生産されますが、GI 認証のニルギリロゴを使用できるのは、タミル・ナードゥ州で栽培・生産された茶に限られます。
南インドにおける茶の栽培試験は、1843年にインド総督ベンティンク卿がニルギリに中国種の種子を送り植え付けたのが始まりとされます。1839年には栽培自体に成功し茶樹を繁茂させることはできたものの、当初は企業化には至りませんでした。その後、北インドやスリランカの事例を手本にプランテーションが発展したと言われています。1926年にはニルギリ地区に茶業試験場が開設され、1948年にコーチン港が輸出港として整備、コーチン・オークションの開始とともに産地は急速に発展しました。
2024年、タミル・ナードゥ州における茶の生産量は約16万3,000トンで、インド全体の約1割強を占めます。「ニルギリ」は「青い山」を意味します。語源には諸説あり、12年に一度咲くニーラ・クリンジが山一帯を青く染めること、また霧が発生しやすく青い靄(もや)に包まれて見えることなどが挙げられます。主な栽培・製茶エリアはウーティー(Ooty)、クヌール(Coonoor)、コタギリ(Kotagiri)などの丘陵地です。
年間を通じて生産が行われますが、北東モンスーンの影響を受ける1〜3月頃は乾燥して日射に恵まれ、香りが豊かで良好な品質が期待できます。紅茶のほか、同エリアではウーロン茶や白茶など多様なスタイルも試みられていますが、流通の中心は紅茶で、輸出・内需ともにブロークン等の実用グレードが多く、ティーバッグ原料としても広く用いられます。
テロワール(気候・標高)と
品質の特徴
ニルギリは南インド西ガーツ山脈の高原性気候に属し、標高約1,000〜2,500mの範囲に茶園が点在します。降水量は年1,000〜1,500mmで、年間を通して比較的冷涼・乾燥、昼夜の寒暖差により霧が発生しやすい環境です。一般に標高1,200m以上ではハイグロウンの性格が現れ、香りはクリーンで渋みは穏やかになります。タミル・ナードゥ州はポーク海峡を挟んでスリランカと相対しており、スリランカ産ハイグロウン紅茶を思わせる香味を持つものもあります。高地のプランテーションでは伝統的なオーソドックス製法でリーフタイプを、低地ではCTC 製法が多く見られます。
ハイグロウンながら、同じインドのダージリンに比べ渋みが穏やかで、雑味の少ないクリーンな飲み心地が特徴です。
主な茶樹品種と製法
アッサム系在来(実生)のほか、南インドの UPASI(United Planters’ Association of Southern India)が選抜したクローナル種が広く普及。高地適性、耐寒性、生産性、品質バランスに優れたクローンが多用されています。
【製法と茶葉等級】
ウーティー、クヌール周辺の輸出向け紅茶を製造している茶園ではセミオーソドックス製法によるBOP(ブロークン・オレンジ・ペコー)、BOPF(ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス)などのブロークンタイプが見られます。また、オーソドックス製法によるホールリーフ、ティーバッグ適性の高い Dust も広く流通しています。南インドの生産量の80%以上(2024年)を占める CTC 製法ですが、ニルギリでは国内向けを中心とした一部の茶園に限られます。CTCとは Crush(押しつぶす)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)の略で、茶葉を機械で細かく砕き揉みながら丸めることで酸化発酵を促進し、濃厚で力強い味わいと濃い水色を生みます。大量生産に適し、コストを抑えつつ品質の安定化が図れるため、現在世界で最も生産量の多い製法です。
ニルギリ紅茶の味・
香りの特徴
水色は明るい赤橙色。スリランカのハイグロウンティーに似た爽やかな渋みがありつつ、強すぎず飲みやすいのが特徴です。香りは若草のようなグリーン、青りんごのような軽やかなフルーティーな香りに加え、クオリティシーズンの良品にはレモンのような柑橘系の爽やかさが現れます。

おすすめの飲み方
ニルギリは穏やかでスッキリした渋みのため、ストレートでもミルクティーでも美味しく味わえます。爽やかな香りを楽しみたい方にはストレートティーがおすすめ。カットしたレモンやライムをさっとくぐらせると、柑橘の香りが引き立ちます。クリームダウンが起こりにくいので、見た目もクリアなアイスティーが作りやすい点もメリットです。
ミルクティーにするとグリーンな香りと穏やかな渋みのすっきりミルクティーに。BOP や BOPF、CTC など細かいグレードを選ぶと紅茶のボディがしっかり立ちます。蒸らし時間はストレートよりやや長めに設定してください。
甘みは、グラニュー糖を加えると爽やかな香りが残り、ニルギリらしいすっきり感を残しながらバランスを取ることができます。
スイーツ・フードとのペアリング
(相性の理由と具体例)
ニルギリのグリーンでウッディな香りと穏やかな渋みは、スイーツだけでなく食事の風味も引き立て、幅広い食べ物と相性良好です。
ショートケーキ:ニルギリのフルーティーな香りと、いちごの風味が一体となって口の中に広がります。ほどよい渋みは、ショートケーキの風味を引き立てます。
草餅:ニルギリのウッディな香りと、よもぎの風味が重なり合い、爽やかな香りの余韻を楽しめます。ほどよい渋みは、草もちの風味を引き立てます。
蕎麦:ニルギリのウッディな香りと蕎麦の風味が重なり合い、爽やかな香りの余韻を残します。ほどよい渋みは、蕎麦やかつおだしの風味を引き立てます。
まとめ
ニルギリ紅茶は、南インドの高原が育む爽やかな香り、明るい水色、穏やかな渋みが魅力です。ストレートでスッキリとした香味を楽しむ日、BOPF や CTC でボディを効かせたミルクティーにする日など、シーンに合わせて選べば万能性がいっそう際立ちます。バランスの取れた香味はさまざまな食べ物とも好相性。ぜひお気に入りの一杯を見つけてください。
参考文献
・紅茶の大辞典(成美堂出版)
・改訂版紅茶入門(稲田信一編著 株式会社日本食糧新聞社)
・紅茶をもっと楽しむ12ヶ月(講談社)
・紅茶読本改訂版(斎藤禎著 株式会社柴田書店)
・三井農林株式会社お茶化学研究所「紅茶キャラクターホイール|お茶のおいしさ」 : https://www.ochalabo.com/taste/taste20141205.html
・UPASI Tea Research Foundation : https://www.upasitearesearch.org/
・Tea Board of India : https://teaboard.gov.in/TEABOARDCSM/Nw==
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