三井農林株式会社 SCM購買本部 購買部 鑑定室 兼 R&D本部応用開発部 茶葉開発室 所属 グランドテイスター
1986年入社。製造、生産管理、購買、茶葉開発を歴任。現在は主に日本茶の購買や茶葉開発を担当。紅茶の生産者を初めて訪問したのが2010年。その後はほぼ毎年現地を訪問しており、生産者の下で紅茶づくりの手伝いをしながら経験を積んだ。
偶然、茎のフルーティーな香りに気づいた
中村:最近、山脇さんは茶産地を訪問して製茶しているイメージがあるのですが、どのくらいの頻度で訪問しているのですか?
山脇:今年は、春から夏にかけて産地を訪れて、和紅茶を作っていました。この後、秋にかけても、九州を訪問する予定です。
中村:和紅茶づくりはいつ頃から始めたのですか?
山脇:2017年頃から産地に入り緑茶や和紅茶づくりを始め、その頃から日本茶AWARDにも出品するようになりました。

中村:和紅茶の基本的な製造工程を教えてください。
山脇:まずは、摘採した生葉を萎凋(いちょう)させます。場所や気候にもよりますが、12〜18時間くらいかけて、葉をしおれさせます。萎凋させた生葉を、揉みこむ揉捻(じゅうねん)という工程を経て、酸化発酵した後、乾燥させる、というのが一般的な紅茶の製造工程です。
中村:紅香は、茎の部分を活用した和紅茶ということですが、このアイデアを思い付いたきっかけを教えてください。
山脇:製茶していると、茎が大量に排出されてきます。その製茶工程で分離された茎が、時間がたつごとにフラワリーな香りからフルーティーな香りになることにある日気が付いて、ちょっと試作してみようかな、というのが始まりです。これをうまく製茶すれば、おもしろい香味をもった和紅茶が創れるかもしれない、という遊び心から始まった取組でした。去年、まずは試験的に製茶したところ、手応えを掴んだので、今年はもう少し量を増やして製茶しました。
中村:偶然、茎のフルーティーな香りに気づいたのですね。
山脇:一般的に緑茶の茎は、茎茶や棒焙じ茶として利用されるものなので、和紅茶でもうまく活用できないか、という思いが頭の片隅にあったのだと思います。
中村:紅香では、何番茶を使用していますか?
山脇:一番茶と二番茶です。茎以外にも葉っぱの部分も入っています。ちなみに、紅香は、酸化発酵しているときの茶葉の色が鮮やかなオレンジ色になり、とても綺麗です。写真も撮ったのですが、この鮮やかさは写真では表せません。これは現場に来ないと体験できない色味です。
中村:それは見てみたいです。今度は、製茶現場も取材させてください!
山脇:来年の茶期に来てもらえれば、見られるかもしれません。
五感を使って製造条件を決める
中村:紅香の味わいについて、教えてください。
山脇:紅香は、熟した果実のようなフルーティーさがあります。例えるなら、ドライマンゴーのような香りを感じます。また、茎からくるウッディーな香りもあります。
中村:渋みも控えめで、すっきりと飲めますね。
山脇:そうですね。すっきりしているけど、フルーティーな香りは余韻として残ります。そこがおもしろいところです。
中村:この特徴を出すためのポイントを教えてください。
山脇:萎凋が進むとともに、香りの傾向が変わってきます。萎凋にかける時間もテストしましたが、外気温や天候によって、最適な条件が変わります。また、酸化発酵をしすぎると急に香りがなくなったり、発酵が浅いと青臭さが残るなど、調整が難しいです。
中村:状況に合わせて、製造条件を決めていくのですね。
山脇:例えば、今日は生葉の水分がちょっと多いから基本設定から調整する、という判断はやっぱり人がします。そこが技術ですよね。目で萎凋の状態を見る、手触りで葉に含まれる水分量を確認する、発酵が進んできたか香りで判断する。最後は感覚です。香りの変化を確かめながら、どのタイミングで次の工程に移るか決めていきます。五感をフルに使って条件を決めていく作業です。
中村:今回、日本茶AWARD2026に出品するにあたっての想いを教えてください。
山脇:茎をメインにした和紅茶はあまり見かけないので、この香味が日本茶AWARDでどう評価されるか楽しみです。偶然、茎にフルーティーな香りがあることに気づき、自分としては遊び心をもって製茶しました。今年の評価をもとに、来年の紅香の製造条件を考えていきたいです。

中村:どのように評価されるか楽しみですね。
山脇:このお茶がきっかけで、和紅茶に新しいトレンドが生まれると嬉しいですね。
中村:最後に、お客様に向けてのメッセージをお願いします。
山脇:偶然から生まれた商品なので、その偶然から生まれた香りと味を楽しんでほしいです。普段飲まれている紅茶との違いを楽しんでもらえると嬉しいです。


















