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産地

「青い山」ニルギリで育つ紅茶

ニルギリの「Tea Studio」、
究極の手作りが見せる新境地。
ムナールでは動物たちがお出迎え

ニルギリからムナールへ移動中の風景。
看板は、アナマレータイガー保護のため荷物検査の協力を仰ぐもの。
人と動物が心地よく共存している。

ふもとを後にして2〜3時間経っただろうか。舗装された道を走る車中、心地よい揺れに身を任せていたら、あっという間に次の目的地に到着した。

Tea Studioは、年間製造量が10〜12トン程度の極小さな工場(この一帯の工場は平均1,500〜2,000トン)なのだが、手摘みの茶葉でつくったというこだわりのお茶が評判で、是非一度訪れたいと思っていた場所だ。創業者がプランターとティートレーダー、双方の顔を持つ異色な人物であることも目を引く。

出迎えてくれたのは、創業者のご息女であり工場長のムスカーン・カーナさん。笑顔が健康的で口元の可愛い女性だ。ここでは5名しかいない従業員はみな女性。少し緊張してしまう。


紅茶ができるまで

こだわりのお茶とは聞いていたが、通常の紅茶製造ではまずお目にかかれない手作りの工程には目を見張るものがある。紅茶づくりでは、茶摘みのあと、まず葉を萎れさせて(萎凋)、揉み、丸まった葉の塊を解していく。乾燥させて品質を固定したら異物を取り除き、葉の大小でグレード分けをした後ようやく袋詰めだ。しかし、ここTea Studioではもう一工程増える。

萎凋の前に、葉と芽の間にある小さな茎を一つ一つ、人の手で取り除いていくのだ。たしかに茎は、香りや味に影響するお茶の成分を殆ど含まないから、無いに越したことはない。ただし効率を考えると、高級茶ですら茎が付いたまま製造が進むもの。グレード分けの際ふるいにかければ、粒度が大きくリーフティー向きの製品に茎が残ることはそれほど無いからだ。それを初期段階で徹底的に無くすという。相当なこだわりと覚悟がなければできないことだ。

Tea Studioはその名の通り、見せることを意識した工場でもある。美は、人の視線に晒されることで磨きがかかる。(一面鏡張りの部屋でダイエットが成りやすいとよく耳にもする。)例えば、ここの鑑定台は開放的でとても見晴らしがよく、陽光が惜しげもなく燦燦と降り注ぐ。本来は同じ条件下で評価ができるよう日光はタブーなのにも拘らず。工場には、バイヤーや消費者もよく訪れるので、こうした人々を「魅せる」ことも、工場のブランドを育て守るために大事なことなのかもしれない。


1.手作りで生茶を選別しているところ 2.山々を一望できる鑑定台
旅人プロフィール

紅茶/日本茶インストラクターで、2児の父。
「大切なことは現地にある」をモットーに、世界の茶園を渡り歩く。
そして現地では料理やビールもしっかり堪能するのだ。

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