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対談

多くの挑戦と検討を重ねて創り上げた自信作。
蜜柑の花のやさしく甘い香りに魅せられて
 – Botanytea 蜜柑の花 開発秘話 –

2023.9.22
みかんの花

つくり手の個性を味わう「nittoh.1909」のティークリエイターシリーズに、新たに誕生した「botanytea – 蜜柑の花 –」。和紅茶をベースにみかんの花のやさしく甘い香りを添えたこの商品を開発したのは、茶葉開発室に来て3年目を迎えるティークリエイター・須田愛です。

なぜ、みかんの花と和紅茶を組み合わせたのか、完成までにはどのような苦労があったのか。開発企画室・中村康太との対談を通して、開発までの経緯を紐解きます。

つくり手:須田愛

三井農林株式会社 R&D本部応用開発部 茶葉開発室所属
2019年入社、本社の飲料原料部に所属、飲料メーカー向けの営業を約2年経験。
その後、静岡県・藤枝工場にある茶葉開発に着任し、紅茶の開発を担当。
直近では中国茶の開発などにも携わり、一つの茶種にこだわらず日々勉強中。

須田愛
聞き手:中村康太

三井農林株式会社 企画本部 企画開発・ソリューション部 ECプランニング室所属
2013年入社、飲料メーカー向けの営業を約7年経験。
スリランカ、インド等の紅茶産地訪問の経験を活かし、2020年から自社ECサイトの商品、コンテンツの企画開発を担当。nittoh.1909のイベントやファンミーティングにも出没します。

会社帰りに漂ってきた花の香りをヒントに開発に着手

中村:茶葉開発の仕事に携わって3年目だそうですが、営業から異動が決まった時はどんな気持ちでしたか?

須田:最初は「どうしよう」と不安に思っていた、というのが正直なところです。でもお茶は好きだったので、どうせ行くなら営業時代に売っていた商品を一から勉強して詳しくなろう、と前向きな気持ちに変わっていきました。茶葉開発ではお茶の基礎知識を学ぶことができますし、会社の中でも一番いろいろなお茶を飲むことができる。さらに、良質な紅茶とも出会えるので、今は成長できる部署に異動させてもらったと感謝しています。

中村:今は1日にどのくらい紅茶を飲むんですか?

須田:試作が必要な案件があれば、1つの案件でいろいろなパターンを試すために5カップほどを3、4回繰り返し飲みます。2〜3案件重なることもあるので、1日に30〜40杯くらい飲んでいるのではないでしょうか。

試作している様子""

中村:配合を変えるなどして何パターンもつくり、その中でどれがいいか飲んで確かめる、という感じですね。

須田:そうですね。ブレンドの配合比率を変えたものを何パターンかつくってみたり、フレーバードティーではフレーバーの配合比率を変えたものを何種類か試してみたり。一人で飲むのではなく、他の室員にも試飲をお願いして意見をいただくようにしています。

中村:今回、新たに開発した「botanytea – 蜜柑の花 –」でもたくさんのパターンをつくって検討を重ねたと思いますが、まずはなぜみかんの花を和紅茶に着香した商品をつくろうと思ったのか、きっかけから教えてもらえますか?

須田:和紅茶を飲んだ時、とてもびっくりしました。茶葉開発に異動して今までよりいろいろな紅茶を飲む機会がありましたが、和紅茶を飲んだ際に自分が今まで飲んできた紅茶とは違って渋みが少なくフルーティーやフラワリーな香りがあって飲みやすいことに衝撃を受けてしまって。とくに井村製茶さんの桃のような香りがする「ももか」、吉田茶園さんの「IZUMI」という柑橘系のフルーティーな香りを感じる和紅茶は本当においしかった。今までの紅茶の概念を覆されたことに感動して、和紅茶を使った製品を立ち上げたいな、と思ったのが開発の第一歩です。

紅茶とスイーツのペアリング
井村製茶さんの和紅茶はスイーツのほかさまざまな料理に合わせて楽しめる。

和紅茶の魅力である芳醇な香りとまろやかな味わいを生かすためには、違う茶葉をブレンドするのではなく、ナチュラルなフレーバーをつけるのがいいのではないかと思い、花の香りはどうかと開発を始めました。

中村:最初から「蜜柑の花」は構想にあったのですか?

須田:最初は花茶での必須条件となる香りの強い花を探しました。さらに和紅茶なので日本らしい花がいいな、という2軸で候補を挙げていった感じです。日本の三大香木、三大香花、開発室がある藤枝市で有名な藤の花や香りが強くフレーバードティーでよく使用されているバラ、キンモクセイなども考えていました。

検証した結果、食品に扱うことができない、花自体の香りが弱いと、条件が絞られていく中、新たに候補に挙がったのがみかんの花でした。開発室がある藤枝にはみかんの木があって、会社帰りに立ち寄ったコンビニの駐車場で「なんかいいニオイがするな」と思っていたら、それがみかんの花の香りだということがわかって。それでみかんの花でも挑戦してみようと思ったわけです。

新たな挑戦は検討すべき項目が多く試行錯誤の連続だった

中村:みかんの花はどうやって入手したのですか?

須田:試作をするにあたり、まずは会社として、お付き合いのあるJAにみかんの花をいただける農園がないか相談してみました。「何をするの?」というところから始まりましたが了承してくださった農家さんを紹介していただき、2021年の4月、花が咲く時期に試作サンプルを作ることができました。

ただ、いろいろなパターンを試すにはひとつの農家さんでは花が足りなかったので、近隣のJAにも相談しました。結果、複数の農家さんにご協力いただくことができ、とてもありがたかったです。

みかん農園

中村:みかんの花を使って、どのような検討をしたのですか?

須田:最初は花の咲き具合による香りの強さを調べました。つぼみの状態、5分咲きくらい、全開と、いろいろなパターンを試してみた結果、5分咲きくらいが香りが強いことが判明したので、そこを目指して花を摘むことに。自分の手で摘んだので、かなり大変でした。

みかんの花の画像

次に検討したのは着香方法です。最初はジャスミン茶に習って花と茶葉を接触させながら混ぜ合わせる方法を考えていたのですが、それでは製造上の問題が生じたため、直接接触せずに香りをつけたいと思うようになりました。いろいろ試した結果、香りづけをしたあとに、花はすべて製品から取り除く方法にて、今回製造を行いました。今回はティーバッグに包んでから着香する方法に。そうなると手作業では大変なので、機械でできるかの検証や、そもそも包まずに半接触でできないか、など接触方法の検討もしました。

その後は着香して濡れた茶葉の乾燥方法も検討。火を入れて乾燥させると花の香りが飛んでしまうので、香りをいかに残すかがポイントでした。採取に適した開花具合、着香方法、乾燥方法の3ステップは本当にたくさんの検討をしましたし、どれも本当に苦労したところです。

須田さん

中村:そんなにいろいろな検討を重ねていたんですね。結局、着想から完成までにどのくらいかかったんですか?

須田:2年半くらいです。でも早く商品をつくりたいという気持ちが強くて、中村さんにも頻繁に味見をお願いしちゃいました。

中村:僕は3回くらい試作品を飲みましたが、こんなに大変な作業をしていたとは知らず、軽い気持ちで「去年よりも香りが弱いね」なんて言ってしまって、すみません(笑)。でも最初に送られてきたサンプルがとても良かったんですよね。「これはいいね」といったら「まだ検証したいことがある」と試作を続けて。でも、その後に送られてきたものは最初ほどの感動がなかった。

須田:最初は茶葉に対して花の使用割合を多めにしていたのですが、花の量を確保することが大変で花の使用量を変えたんです。そうしたら中村さんに「香りが弱い」と言われてしまって(笑)。お花の量に対する茶葉の量も検証もして、結果最初の使用量を目指すことになったので、完成品は満足のいく出来に仕上がりました。

ホッとする味と香り。時間をかけて味の変化も楽しめる紅茶

中村:では須田さんの自信作を試飲してみましょう!

須田:やはり目の前で飲んでもらうのは緊張しますね。

中村:淹れている瞬間にも花の香りがきますね。ティーバッグではなくドリップバッグなので香りも広がる。

ドリップバッグで紅茶を入れている様子

須田:そうですね。蜜柑の花は個人的にはジャスミンに似た感じもありつつ、スズランのような白い花特有の凛とした香りも持ちあわせていて、私も最初に淹れた時はびっくりしました。

中村:では、いただきます。(一口飲んで)とてもいい香りがしますね。最初は軽いスズランのような爽やかな甘い香りがして、飲んだ後は濃厚な甘さの花の香りがする。鼻に抜ける香りで余韻も楽しめますね。おいしい!

須田さんと中村さんが話している様子

須田:ベースの和紅茶はブレンドして、少しフルーティーに仕上げました。試作の中で「やぶきた」だけの方がいいのか、「べにふうき」とのブレンドがいいのかなど、何が一番合うのか試行錯誤しましたが、和紅茶のフルーティーな余韻が残るように「やぶきた」などの複数品種のブレンドを使うことにしたんです。

注:べにふうき:紅茶や半発酵茶用に改良された品種で、紅茶に加工すると濃い水色と高い香りが特徴
   やぶきた:静岡県で誕生した日本を代表する緑茶用品種

中村:すごくホッとするやさしい味と香りですね。香りも今まで試飲した中では一番強い。渋みもあまりなくて、和紅茶の飲みやすさも表現されていますね。

須田:よかった!新しい和紅茶、花茶として楽しんでもらえるとうれしいです。和紅茶の商品は最近増えていますが、和紅茶100%の商品はまだまだ手にとってくださる方は少ないのが現状です。和紅茶をもっと多くの方に知ってもらえるよう、いろいろなアプローチで露出度を増やしていくのが大事だと思ったことも、今回の開発で和紅茶を使うきっかけになりました。

中村:お茶好きの方だけでなく、そこを一歩飛び出して花の香りが好きな人にもアプローチできるといいですね。淹れてから少し時間が経ちましたが、冷めてもまた違った味わいでおいしい。さっぱりとした甘みがあるからアイスティーにも向いているかも。

須田:ホットではトップノートが強い感じですが、冷めてくるとラストノートの香りが強くなると感じています。農家さんやJAの皆さまにも試飲していただいたのですが、ここでも「アイスティーにしてもおいしいかも」という意見が出ました。「花の香りだけでなく、みかんの木の香りもする」という声もあったんですよ。花の香りとも実の香りとも違う、みかんの木のウッディな香りもするとおっしゃっていました。

紅茶とのペアリング

中村:ご協力いただいた関係者のみなさんには感謝ですね。

須田:今回の開発は本当に大変でしたが、生産者さんとのつながりも出来たので、挑戦してよかったです。

中村:最後にお客様に向けてのメッセージをお願いします。

須田:紅茶が好きな方や、ジャスミン茶などお花の香りが好きな方にもぜひ飲んでいただきたいですし、紅茶好きの人にも「こういうものあるんだ」と思っていただけたらうれしいです。「ホッとする」といろいろな方に言っていただいたので、「botanytea – 蜜柑の花 –」を飲んでひと息ついていただければと思います。

須田さん中村さんと商品
以前、営業で同じ部署に在籍していたという中村さん(左)と須田さん(右)。須田さんが新人だった頃は中村さんにいろいろなことを教えていただいたそうです。今回のインタビューでも中村さんへの信頼が随所で感じられ、2人の良い関係性を垣間見ることができました。
みかん農家
ご協力いただいた静岡県清水区のみかん農家さん。須田さんはみかんの生態や栽培方法、年間を通してどのタイミングで何の作業をするのか、といったことを農家さんから直接教えていただいたそうです。
みかんの花
ご協力いただいたみかん農家さんとは、花の育成に合わせてコミュニケーションをとっていたという須田さん。JAの方と一緒にミーティングに参加していただいたこともあり、あらゆる面でお世話になったと話します。