5産地を比較して時間経過による
香味の変化を検証
1L容量の保温ステンレスボトルに、下記条件で抽出した紅茶を600ml入れた時の変化について、官能評価と機器による分析を行いました。
対象の紅茶はアッサム、ディンブラ、ダージリン・セカンドフラッシュ、ウバ、ヌワラエリヤの5種類です。
官能評価では、トレーニングを受けた専門パネル7名にて、「淹れたて」(青ライン)と「ステンレスボトルに入れて6時間後」(赤ライン)の香味変化を評価しました。赤ラインの円の形が青ラインの円に近いほど、香味変化が少ないことを示しています。
アッサム
抽出条件:茶葉10gに対し、
熱湯600ml/抽出時間3分
ディンブラ
抽出条件:茶葉10gに対し、
熱湯600ml/抽出時間2分30秒
ダージリン・セカンドフラッシュ
抽出条件:茶葉10gに対し、
熱湯600ml/抽出時間4分
ウバ
抽出条件:茶葉10gに対し、
熱湯600ml/抽出時間2分30秒
ヌワラエリヤ
抽出条件:茶葉10gに対し、
熱湯600ml/抽出時間2分30秒
いずれの紅茶も、グリーン、フラワリー、フルーティー(フレッシュ)は弱まり、フルーティー(加熱加工)とスイートは強まる傾向に。
また、渋みの強さはほとんど変わりませんでした。
5産地を比較して時間経過による
機器分析を実施
次に、熱湯で抽出した紅茶の持つ香り成分を機器分析(GC-MS)し、「淹れたて」と「ステンレスボトルに入れて6時間後」を比較しました。
産地を問わず、「青い香り」や「華やかな香り」は減少し、「甘い香り」は増加する傾向であることが分かりました。
アッサム
ディンブラ
ダージリン・セカンドフラッシュ
ウバ
ヌワラエリヤ
時間経過により弱くなる「青い香り」や「華やかな香り」は、全体的な香味のバランスに影響することから、保温ステンレスボトルでの時間経過に強い(向いている)産地が見えてきました。
発酵が深いアッサムやディンブラは、もともとフルーティー(加熱加工)、スイートな特徴が強いため、全体の香味変化が少なかったと考えられます。
一方、ウバ、ダージリン・セカンドフラッシュ、ヌワラエリヤは「青い香り」や「華やかな香り」が弱まり、フルーティー(加熱加工)やスイートな特徴が強まったため、全体としての香味変化が大きくなったものと考えられました。
ステンレスボトルに入れて持ち歩くには
アッサムやディンブラがおすすめ
今回の検証から、ステンレスボトルに入れて持ち歩くなら、時間経過による香味変化が少ないアッサムやディンブラがおすすめです。
社員の中には「紅茶を抽出してすぐにボトルにいれると保温性が高くてすぐは飲めないので、さし水をして温度を下げてからボトルに入れている」という者がいました。
筆者も同じような経験をしたことがあるので、特に金属が口に触れるタイプのボトルを使っている方はやけどにご注意ください。
※今回の実験条件においては、上記の結果となりましたが、ステンレスボトルのメーカーやボトルサイズ、抽出条件等によって、異なる結果となる場合もございます。また、ステンレスボトルの使用については、各メーカーが推奨する方法をご確認いただき、ご使用いただくことをお勧めいたします。飲み物を入れた状態で長時間放置すると、腐敗や変質の原因となるためお止めください。抽出した紅茶はお早めにお召し上がりください。