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対談

新しいゆず茶のカタチ – 天空の徳島柚子 – 
前編 / 秘境の空に広がる農園をたずねて

2022.12.15
見晴らしの良い山と空の景色

TEA CREATORの「Botanytea(ボタニティー)」は「植物本来が持つ自然な香りを楽しんで欲しい」という思いから誕生したシリーズです。

その第二弾としてお送りするのは「Botanytea-徳島県産ゆず-」。

中村農園の生ゆずを和紅茶に着香し、香料不使用のセンティッドティーに仕上げました。香り成分の減少を抑えるフレッシュアロマ製法を採用し、従来では難しかった生ゆずが持っている本来の香りを体感できる商品です。

今回は、この商品で使われている「天空の徳島柚子」の生産者、中村農園の中村博さんと、新製法を開発し「Botanytea」を創り出したティークリエイター・秋林健一の対談をお届けします。

つくり手:中村博

徳島県三好市の自然豊かな山あいに位置する中村農園の2代目。
元々は三好市で役所勤めをしていたが、2015年、父の後を引き継いでゆず栽培を始める。同時に化学肥料・化学農薬を使わない栽培方法へ移行し、安心・安全を目に見える形で知ってもらおうと2020年10月に有機JAS認証を取得。
ゆずのおいしさを広く伝えるために「ゆずシロップ」、「ゆずジュレ」などの加工品を販売するほか、「黄色ユズ」の海外展開にも積極的に取り組んでいる。

中村農園 »

つくり手:中村博
つくり手:秋林健一

三井農林株式会社 R&D本部 茶葉開発室所属。
2005年入社、宮原工場(現藤枝工場)品質管理課に配属。その後、広島工場(当時)品質管理課へ異動し、7年間、主にティーバッグ製造やIGT(インスタントティー)の品質管理に携わる。2012年に鑑定室へ異動。現在に至る。
原料購買での経験を活かした荒茶(茶葉(生葉)を蒸熱、揉み操作、乾燥等の加工処理を行い製造したもの。また仕上げ茶として再製する以前のもの)作りを得意とし、お客様が求める「あの商品のあの味」を寸分違わずに再現する。

秋林健一

【主な受賞歴】

2018年
#3(スクエアスリー) RePro
日本茶AWARD プラチナ賞(「紅茶・後発酵茶以外の発酵系の茶」部門1位)
2020年
#3 スクエアスリー 2020 春茶
Japanese Tea Selection Paris 2020 銀賞
#3 スクエアスリー 2020 夏茶
“Teas of the World” International Contest AVPA2020 Gourmet Japanese Tea Selection Paris 2020 銅賞
2021年
Botanytea-小豆島産ベルガモット-
Great taste awards 2022 3つ星(最高賞)
2022年
#3(スクエアスリー) TRIAL 2022
ジャパン・ティーフェスティバル プレミアムティコンテスト2022 5つ星(最高賞)
“Teas of the World” International Contest AVPA2022 Bronze
あの時飲んだ、あの烏龍茶の、あの味が忘れられなくて〜22春〜
日本茶AWARD2022 審査員奨励賞
Botanytea-徳島県産ゆず-
Great taste awards 2022 1つ星

秋林:中村農園さんには初めて来ましたが、ずいぶん標高が高い場所にあるんですね。

中村:徳島の西の端にある三好市は高知、香川、愛媛3県との県境に位置します。農園は標高400mほどの高いところにあって寒暖差が大きいため、酸味があって香り高いゆずを育てることができるんですよ。

秋林:だから「天空の徳島柚子」と名づけたのですか?

中村:恥ずかしながら(笑)。農園にはいろいろな方が訪ねて来ますが、こんなに高いところで育てている人はあまりいないと言われましたし、実際に畑からの眺めもいいのでこのネーミングにしました。

中村農園からの眺め

秋林:たしかにとてもいい眺めですよね!でも畑は山の斜面につくられているから作業が大変じゃないですか?

中村:実は、この傾斜がおいしい柚子を育ててくれているんですよ。山あいは雨が多く降りますが、傾斜地なので水はけがよく、ゆずの黄色が鮮やかに出る。だからゆずの栽培には最適なんです。傾斜地を利用した農業は「にし阿波の傾斜地農耕システム」として世界農業遺産にも登録されています。

農園と中村さん

秋林:地形を生かした伝統農法で作られているんですね。中村農園さんも歴史は古いんですか?

中村:柚子の栽培は私が2代目になります。先代の父が長年やっていましたが、2015年12月に亡くなり私が引き継ぎました。2年間ほどは兼業でゆずを栽培していましたが、だんだんと地域がさびれて人口も減少、耕作放棄地がまわりにどんどん増えて寂しさを感じていたんです。そこで、ゆずの栽培を通じて地域に貢献できたらと、4年前、59歳で専業にすることを決意しました。

今は4000屬旅さの農地で、280本ほどのゆずを育てていますが、そのうち父から受け継いだ木は150本ほどで、残りの130本は私が新しく植えたものです。

語る中村さん

秋林:100%ゆずに専念するなんてすごい勇気ですね。

中村:最初は勝手がわからず試行錯誤の連続でした。父の栽培日誌を辿りながら、手入れや出荷先の時期を確認するという手探りの状態で。あとは農大で勉強もして知識を増やしていった感じですね。

秋林:しかも中村農園さんは有機栽培を行っていますよね。有機栽培は大変だと聞きますがどのような苦労があるのでしょうか?

中村:除草剤を使えないため1年中雑草との戦いです。妻が除草していますが、とても大変だと言われます。あとは虫。農薬を使えないので虫には常に悩まされています。夏場に気をつけなければいけないのはカミキリムシ。枝を噛むだけでなく木の株本に卵を産みつけ、ふ化した幼虫が木の中に入り込んで中を食い散らかしてしまうんです。そうすると木が枯れたり弱ったりするので、卵を産み付けないように株元に網を張るなど対策が必要になります。

カミキリムシ

中村:その他にも、若い芽が出た時期はチョウチョウが葉を食べ尽くしてしまったり、花が咲くとハチなどの訪花昆虫が実となるめしべやおしべを傷つけてしまってきれいな実ができなかったり。防ぎようがないものもありますし、対策もとらなければならないので、有機栽培は苦労が多くて手間ひまもかかるんです。

柚子に手を伸ばす秋林

秋林:とくに夏場は雑草がひっきりなしに生えてきて大変ですよね。畑の中は草刈り機も使えなさそうですし。

中村:そうなんです。畑にはうちの有機栽培には不可欠なナギナタガヤが生えているので、それを避けて除草するためにも手作業になってしまいます。

秋林:ナギナタガヤは中村農園さんの有機栽培にはどのように役立っているのでしょう?

中村:ナギナタガヤはイネ科の植物で50僂曚匹旅發気砲覆蠅泙后6月くらいに穂が倒れて藁を敷いたような状態になり、それが肥料になってくれるんです。夏場は土全面を覆って遮光もしてくれますし、雨が降っても傾斜による土の流出を防いでくれる。それが有機肥料になってくれるのですから、「自然が助けてくれているんだな」と感じます。

ナギナタガヤが敷かれている様子

ただ、欠点は滑りやすいところ。傾斜でツルッと滑ってしまうこともあるので、ゆずには優しいけれど人間には優しくないですね(笑)。

秋林:そういった多くの苦労がありながらも有機栽培を続けるのはなぜですか?

中村:黄色いゆずは、果汁はポン酢に、皮は薬味に、果肉はジャムに、種は化粧水にと、丸ごと全部使うことができます。さらに風呂に入れれば柚子湯も楽しめる。口にしても肌に触れても安心・安全なゆずを届けたい、という思いで有機栽培を続けてきました。さらに、「ここで採れたゆずは間違いなく安心です」と自信を持って言えるものを作りたい。だから大変なことが多くても、見た目にきれいなものができなくても有機栽培にこだわっているんです。

天空のゆず

秋林:中村さんが思うおいしいゆずの定義はありますか?

中村:しっかりとした香りと深い酸味があり、安心・安全なゆずは、いいゆずと言えると思います。流通しているゆずの多くは見た目がきれいですが、農薬を使っているものもたくさんありますから。

秋林:「Botanytea(ボタニティー)」では果実の皮まで使うので、有機栽培をしているこだわりの生産者さんを探していました。中村農園のゆずがあってこそ、この和紅茶をつくることができたと思っています。

中村:秋林さんには全体の1割しかない希少な「優品」を選別してお送りしているので、「優品」を使っていることもおいしさや見た目の華やかさに繋がっているのではないでしょうか。

後編へつづく