【お知らせ】大型連休の営業スケジュールと商品発送について
Search

そのときの気持ちにおいしいお茶を

Collection

コレクション

Category

商品カテゴリー

 

トップ>コラム一覧> 和紅茶の魅力 – 鹿児島・枕崎で長年情熱を注いできた紅茶のつくり手 茅野薫さんをたずねて –

対談

和紅茶の魅力
 – 鹿児島・枕崎で長年情熱を注いできた紅茶のつくり手 茅野薫さんをたずねて –

2023.12.22
茅野さんの写真

三井農林の紅茶生産の礎を築いた日東紅茶枕崎工場に勤めた経験を持ち、長年にわたり「国産のおいしい紅茶をつくりたい」という情熱を持ち続けてきた茅野薫さん。その実現にあたり枕崎で研究に邁進して50年以上。たゆまぬ努力を重ねてきた先人のひとりである茅野さんに、紅茶づくりに対する想いを語っていただきます。

つくり手:茅野薫

1941年生まれ。瀬戸茶生産組合代表。
高校卒業後、県立茶業試験場で紅茶の栽培法を学び、1962(昭和37)年に日東紅茶(現在の三井農林株式会社)に就職。5年ほど枕崎工場に勤めた後、独立して緑茶農家を始める。2002(平成14)年、国産の品種「べにふうき」と出会い、紅茶の復活を目指す仲間とともに枕崎紅茶研究会を設立。「枕崎紅茶」の復活に取り組むなど枕崎市茶業の発展に尽力。現在は紅茶の栽培・販売も行っている。2009(平成21)年、英国の権威ある食品コンテスト「グレート・テイスト・アワード」で紅茶が最高賞の三つ星を受賞し、以後も星を獲り続けている。

聞き手:山脇澄人

三井農林株式会社 飲料原料・購買本部購買部鑑定室 兼 R&D本部応用開発部 茶葉開発室所属 グランドテイスター
1986年入社。製造、生産管理、購買、茶葉開発を歴任。現在は主に緑茶の購買や茶葉開発を担当。
会社のOBに連れられて茅野さんの農園を初めて訪問したのが2010年。その後はほぼ毎年現地を訪問しており、以前には茅野さんの元で紅茶づくりの手伝いをしながら勉強した経験もある。

退職後も国産紅茶への夢は捨てきれなかった

山脇:1960年代頃、枕崎は国内有数の紅茶生産地で、弊社も枕崎に茶園と工場を持っていました。茅野さんはここで働いていたことがあるんですよね?

日東紅茶建物の写真

茅野:日東紅茶の工場には5年ほど勤務し、紅茶の品質の研究をしていましたが、紅茶の輸入自由化を前に工場の方向転換もあり、退職することとなりました。そして、自分で緑茶農園を始めることにしました。

山脇:結局、1971年の紅茶の輸入自由化の後、枕崎工場はその役目を終えていますね。茅野さんは三井農林を退職してからもいろいろなご苦労があったと思うのですが。

茅野:それは大変でした。退職後に周りからは「そんな畑では苗が育たないから緑茶農園なんて早くやめろ」と言われましたし、親父も3人の兄貴たちも猛反対で。みんなから「破産するからやめておけ」と説得されましたが、私の意思は固かった。財産もお金もないけれど、基本は自分の腕だと思っていたから。この腕があれば誰にも負けないという自信があったので、多くの人の反対を押し切って始めたわけです。

会話している写真

山脇:強い意思で、自分を通したわけですね。

茅野:昭和60年頃には緑茶でずいぶん稼げるようになりましたから、結果的にはいい判断だったように思います。さらに昭和56年には有機栽培も始めました。将来的には必ずそういうお茶が売れる時代が来るはずだ、このままではいかん、と思って。でも2、3番茶になるといろいろな虫がついてしまって、収入がゼロのような状態の時もありました。周囲からは「有機栽培なんて10年早い」 と言われたけれど、自分がやると決めたことだから、諦めずに続行。軌道に乗るまで4〜5年かかりましたが、今は有機栽培品の販売は好調ですから、やっていて良かったと思います。

山脇:有機栽培の緑茶は、今、国内外を問わず引っ張りだこですからね。 緑茶でいろいろな挑戦をしつつも、紅茶の研究は続けていたんですよね?

茅野:緑茶農園をしながらも「いつかはどこにも負けないおいしい紅茶をつくりたい」という夢は諦めずに持ち続けていたんです。だから研究は続けていましたし、昭和48年には最初に国産紅茶で農林水産大臣賞を受賞した三重県亀山市の生産者を訪ねて見学にも行きました。

山脇:茅野さんは枕崎紅茶研究会の一員でもありますよね。

茅野:枕崎紅茶研究会は昔、紅茶づくりをしていた人や、指導していた人が集まって平成14年に発足しました。枕崎紅茶が廃れて約30年経っていましたが、世界に通用する品種との出会いもあり、これが復興への第一歩になると、そこからさらに研究を重ねました。

一芯二葉の手摘みにこだわり、世界に通用する和紅茶が誕生

山脇:その結果、「食のオスカー」とも呼ばれるイギリスの権威ある食品の国際コンテスト「グレート・テイスト・アワード」で最高賞の三つ星を獲るまでになったわけですね。

茅野:そこまでにはいろいろありまして。最初に地元の技術者に「隠れた品種があるから、紅茶をイギリスの品評会に出してみないか」と言われました。その隠れた品種が「べにふうき」で、国内の品評会でも評価された、当時は一番良いものだったらしいです。最初はふつうに摘んだ茶葉で紅茶をつくって出品してみたのですが、一つ星も獲ることができなかった。「これじゃいかん」と思って、とことんこだわって一芯二葉の手摘みでやってみたら三つ星を獲ることができました。

山脇:茅野さんは「べにふうき」なら世界に通用する紅茶ができると感じて、本格栽培に乗り出したと聞きました。紅茶に適した土壌作りから始めて、爽やかな渋みと自然な甘さを得るために有機栽培にも取り組んだそうですね。さまざまな努力があって「グレート・テイスト・アワード」で日本人初となる最高賞の三つ星を獲得したのが2009年でしたが、そこからどれくらい星を獲られているんですか?

茅野:以後、紅茶では一つ星を9回、二つ星を8回いただいています。2023年もべにふうきの紅茶で二つ星を受賞しました。

山脇:「グレート・テイスト・アワード」の結果からもわかるように茅野さんはずっと良質でおいしい紅茶をつくり続けていますが、紅茶をつくる上でのこだわりがあれば教えてください。

茅野:私の原点は、三井農林を辞めた時の「今度紅茶をつくる時は、世界に負けない紅茶をつくりたい」という思いです。そのために、若く柔らかい一芯二葉を、優しく手摘みすることにこだわりました。

べにふうきの新芽の写真
べにふうきの新芽

山脇:茅野さんの紅茶は摘んだ後の工程にもこだわりが詰まっていますよね。

茅野:今は紅茶を揉捻する時、どちらかというと緑茶の機械を使う人が多いけれど、紅茶というのは紅茶専門の揉捻機で揉まなければいけないと思うんです。緑茶の揉捻機は揉みやすいように滑らかな凹凸ですが、紅茶の揉捻機は洗濯板のようにゴツゴツしている。ゴツゴツしていたほうが茶葉を切り裂いて発酵が進みやすくなりますから。

山脇:紅茶をつくっている時期はいつでも茶葉の状態がわかるように工場のそばに寝泊まりするくらい、常に気に掛けていますよね。

茅野:生葉を摘採した後は、萎凋という葉をしおらせる工程が16時間くらいあるので、いいタイミングで次の工程に持っていくために夜中の1時、2時くらいに起きて、お茶の状態を見に行くんです。天候や湿度、茶葉の状態などすべてを確認して、「今、この状態だったら朝の7時頃にはどのくらいの萎凋になるから、こうしたらいい」とその時に感じることができるんですよ。

山脇:それを検証のための1回ではなく、生産ごとにやっていると聞いて驚きました。

茅野:好きでなきゃやっていけないですよ。好きだからとことんまでできるんです。

茶畑の写真

山脇:ご苦労も多いと思いますが、茅野さんにとって紅茶づくりの面白さはどんなところにありますか?

茅野:天候・気候に左右されるし、茶葉のポテンシャルも違うので、つくるたびに紅茶の味が違う。そこが面白いところだし、研究のやりがいがあるところ。だから必ず完成した紅茶は試飲して、より良い紅茶づくりに励んでいます。

今後も心を震わせるようなおいしい紅茶をつくり続けたい

山脇:今後、茅野さんが目指す紅茶はどのようなものなのか教えてください。

茅野:世界の紅茶と対等な紅茶づくりです。「日本にもこういう紅茶があるのか」と驚くようなおいしい紅茶を目指して、これからもつくり続けたいと思っています。

山脇:弊社にも、茅野さんの紅茶を飲んで「感動した」「びっくりした」という社員がたくさんいます。

茅野:そういう声を聞くと本当にうれしいですし、もっとおいしい紅茶をつくりたいという思いが強くなります。

山脇:世界と対等になるには、どのような紅茶をつくらなければならないと考えていますか?

茅野:チャは 亜熱帯植物だから、生育に適したインドやスリランカなどでは多少ヘマをしても問題ありませんが、日本の場合は気候的に劣るので少しの失敗も許されません。だから向こうと同じことをしていてはダメ。大事なのは、自分はどういう紅茶を目指すのかを先決すること。これまで50年以上培ってきた経験を踏まえて、先を見た生き方をしなければいけない、とも思うんですよね。

※チャ・・・茶の木は学名をCamellia sinensis(カメリア シネンシス)といい、和名では「チャ」と言います。

山脇:そういう意味では、茅野さんは有機栽培への取り組みなど、先見の明があったと言えますね。

茅野:私は今でも親に感謝ですよ。高校卒業後に茶業試験場に行かせてくれましたから。イギリスで賞をとった時も両親が存命ならば語り合いたかった。再三親の言う通りにしなかったけれど、最後は「あ〜良かった、自分が思うようにできた」と思いましたからね。人間は途中で諦めたらダメ。最後まで、とことんまでやる、ということが何をやるにも大事だと思っています。

二人の写真

今回は茅野さんがつくった紅茶や緑茶を販売している店舗『KAORU園』でお話を伺いました。壁には「グレート・テイスト・アワード」を受賞した際の賞状や新聞に掲載された記事などが飾られ、茅野さんの功績を見ることができます。

茶園訪問時の写真

茅野さんの茶園に伺ったのは秋冬番の緑茶生産の最後の時期にあたる10月中旬。天候に恵まれ、きれいに刈り取られた茶畑の向こうには開聞岳を望むことができました。

「べにふうき」の新芽の写真

茅野さんにすすめられて編集担当が「べにふうき」の新芽を採って味と香りを確かめてみました。「感じ方は人それぞれだと思いますが、私はほのかにべにふうきの香りを感じ、口に入れると渋みと甘みを感じました」と編集担当。一方で緑茶品種は青菜のような苦味があり、品種による違いを実感できたそうです 。

今回は茅野薫さんのお話をもとにコラムを作成させていただきました。この場をお借りして感謝申し上げます。これからもこだわりの紅茶作りで、美味しい紅茶を届けてくださることを楽しみにしております。

関連商品
和紅茶 -Premium Leaf-

和紅茶 -Premium Leaf-Botanytea

5,940円(税込)

ライン