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トップ>コラム一覧> 対談:間口は広く、奥は深く【後編】

対談

間口は広く、奥は深く

「#3(スクエアスリー)×ごとう製茶」後藤潤吏×秋林健一

「TEA CREATOR」シリーズとは、お茶づくりのプロフェッショナルがこれまで培ってきた経験と、研ぎ澄まされた五感から創りだされる、個性豊かなオリジナルブレンドティーだ。「TEA CREATOR」に込められたつくり手たちの思いを、その一杯とともにお届けしたい。

ごとう製茶工場内にてふたり
後藤潤吏さん(左)、秋林健一(右)

ここまでは、後藤潤吏(ごとうひろさと)さんが、茶業に携わったきっかけやものづくりに対する思い、ごとう製茶の紅茶の特徴などについてお話いただいた。

最終回となる今回は、いよいよ後藤さん初のコラボレーション企画となった、ティークリエイター秋林健一とのブレンドティー「#3(スクエアスリー)×ごとう製茶」について迫る。

淹れたてから余韻まで、それぞれの持ち味が楽しめる。

秋林:今回のコラボレーションで、何か得るものはありましたか?

後藤:自分の茶葉をブレンドすることはありましたが、他の方とコラボするのは初めてで、ブレンドの可能性に気付く、いいきっかけになりました。基本的には単体での完成を目指してお茶づくりをしているので、自分のお茶をブレンド用として仕上げることはありません。いつもそのまま飲んで一番おいしくなるように調整しています。

ただ、今回のように全然違うお茶とブレンドすることが最初からわかっているのであれば、単体ではバランスの取れていないお茶を「ブレンド用」として用意しておくのも、おもしろいかもしれないなと思いました。

ごとう製茶の色々な紅茶

秋林:段取りとしては、お互いに2種類ずつ用意してそれぞれを飲んでみて、これとこれが合うんじゃないかなと、まずどの茶葉を使うかを最初に決めました。どのような準備をされました?

後藤:今回は同じ製造ロットで、火入れのパターンで2種類用意しました。

秋林:後藤さんのお茶は洗練されていて、渋みが少なく優しい香りだった。一方僕のお茶は対極的で、荒々しく特徴的な香りがアクセントになる。その両者の調和が取れるように、ブレンド比率を探していきました。

配合は5:5から一緒にテイスティングしていって、それぞれの持ち味が出るのはこの比率かなと、最終的には後藤さん7、秋林3の割合で決定しました。

後藤:入りから伸びまで、それぞれの香りの入りがちょうど分かれていて、時間経過のバランスがいいお茶になりましたね。秋林さんのお茶には立ち上がりの、淹れたての香りの良さがあり、僕のお茶には余韻の香りと、後味のすっきり感がある。

単体でもそれぞれ良さを持っている紅茶ですが、両方のいい特徴がちょうどよく合わさったブレンドになったと思います。

秋林:この紅茶は比較的汎用性が高く、飲めるシーンが多いのではないでしょうか。なんとなく紅茶というとスイーツと一緒に飲むものというイメージがありますが、スイーツ以外にも食事の時や、常用にも使えるんじゃないかな。眠る前のリラックスタイムにもおすすめです。

後藤:本当に、常飲用にもいいと思います。いろんなシーンで、自由に楽しんで欲しいですね。

ごとう製茶の茶園と満開のモクレンの木
撮影:後藤潤吏さん

飲んだひとの思考を、すべて吹き飛ばすようなお茶を。

秋林:後藤さんは、理想のお茶はどんなものだと考えていますか?

後藤:入り口は広く、できるだけ時代にあった、多くの方に好まれる飲みやすい味にしたいと思っています。ただ、間口は広いが、突っ込んだ時には無限に深くしておきたい。

何よりの究極の理想は、自分の身に起きた衝撃の体験のようなことが起きる場に立ち会うことができたら……自分がお出ししたお茶で、そんな奇跡のようなことが起きたら、そんないいことはありません。

ただ、本当は、生きる意味について考え込んだり、思考で煮詰まってがんじがらめ状態になっているひとなんていない方がいいですし、そんな衝撃も誰からも必要とされない方がいい。こっちの勝手な話なので、こうだったらいいなと考えるのはやめました。

それでももし誰かがそんな状態になってしまっていた時に、僕が衝撃を受けて救われたように、同じ衝撃を受けて救われることがあったならば、こんなにうれしいことはありません。

あらゆる前提をとっぱらって、飲んだひとの思考をすべて吹き飛ばすような表現がお茶で実現できたら。そう思っています。

「衝撃を与えたい」という言葉とはうらはらに、後藤さんのつくる紅茶はすべてを包み込むように優しく、香りの余韻がいつまでも漂っていた。自身初のコラボレーションとなった今作は、秋林健一のテイストも加わったことで、今までにない仕上がりとなっている。

このお茶は、後藤さんが理想のお茶として話していた、多くの方に好まれる間口の広さと、一歩踏み入ると奥深い味わいを併せ持った一品といえるのではないか。ぜひ実際に楽しんでみて欲しい。