「#3(スクエアスリー)」を生み出したティークリエイター秋林健一にお話を伺う第2回(計3回)。前編ではこれまでの経歴と、すべてのはじまりとなった契機をお話しいただいた。今回は茶葉鑑定などの業務について伺う。
茶葉の価値をはかる
秋林:ティーテイスターの主な業務は、原料茶葉の買い付け、ブレンド配合(味づくり)、それから商品開発。年間1000トンを超える中国茶の購買に奮闘しています。なんといっても自分の知らない味に遭遇したときは興奮しますね。おいしくてもまずくても、どうやってつくっているのかと想像してしまう。
業務を行う上で、最初に取り組んだのは語学です。中国語は独学で学びました。語学学習の本に加え、お茶の専門誌を読むことが何より勉強になり、専門知識も身につきました。出張の際には本で覚えた片言の中国語でどんどん会話を試みたり。
資格取得の際には中国語での筆記試験や実技があり、抽出した茶の香味評価を中国語で書く場面もありました。
中国茶の資格は大きく二つあり、「茶芸師」は中国国内ではホテルや茶館等、中国茶のサービスや茶芸関連の業務に従事するために必要な資格で、茶文化や所作を学びます。僕が取得した「評茶員」は茶葉の鑑定や管理を行う資格となり、中国では茶葉の輸出や販売、生産関連の仕事に就く人が取得します。
僕が考える茶葉の鑑定のコツは、まずは自分の中で標準の茶葉を決めること。その標準と比較して、評価対象をはかります。
苺に置き換えるなら、たとえば「とちおとめ」を標準とし、酸味と甘味という2軸で評価した場合、「あまおう」は酸味が弱く、甘味が強く感じるため、酸味:-、甘味:+という位置づけで記憶します。
評価対象の茶葉はどんな香味(質)がどれだけ強いのか。強弱は感覚による部分が大きいですが、香味(質)そのものについてはできるだけ身近なモノに言語化した方が覚えやすいです。市場で高い値がついている茶葉、低い値がついている茶葉、それぞれ飲んで、どんな香味に高値がついているかを理解する。香味の良し悪しの判断や相場観は、経験を積むしかありません。鑑定は、香味特徴を的確に捉え、価値を値踏みすることだと僕は考えます。
茶葉の香味が結果なら、製法はプロセス。良いつくりをすれば良い香りが生まれ、悪いつくりをすれば悪い香りが生まれる。どんなプロセスでその結果が生み出されたのか製法の組み立て方にとても興味がわきます。茶園や工場でのつくり方の価値を理解した上で、茶葉の価値(値段)をはかっています。